V-A ECMO(PCPS)について正しいのはどれか。2つ選べ。
a: 抗凝固療法にはヘパリンを使用する。
b: 左心室前負荷を増加させる。
c: ウェットラングとはガス交換膜からの血漿リーク発生である。
d: IABPとの併用は禁忌である。
e: 高度大動脈弁閉鎖不全を有する患者への使用は禁忌である。
V-A ECMOは、Veno-Arterial ECMOのことであり、静脈脱血、動脈送血となり、循環補助、呼吸補助目的で使用される。V-A ECMOでは、大腿動静脈から送脱血を行い、血液は遠心ポンプから人工肺でO2ガスが加えられ、大腿動脈→腹部大動脈→胸部大動脈へと逆流する。そのため、V-A ECMOが使用される多くの患者で多少でも自己心が動いている場合は、順行性に上行大動脈→全身へと血液が送られており、自己心由来の血液とV-A ECMOの血液は腎動脈分岐付近で2つの灌流がぶつかることとなる、非常に非生理的な血行動態となる。V-A ECMOは、重症冠動脈疾患症例の経皮的冠動脈形成術 (PTCA) 施行時の循環補助や、呼吸不全における呼吸補助、重症心不全症例に対して適用されるが、左室の負荷を軽減できないことが決定的な弱点となる。また、PCPS装着の遅延により心肺機能が回復しても多臓器に影響を残すこととなるため、適用基準を設けている。
(適応)
心原性ショック、心停止
心肺停止蘇生例
難治性で繰り返す心室細動や心室頻拍患者
急性冠症候群の冠動脈形成術までのサポートやブリッジ
急性肺血栓塞栓症によるショック
偶発性低体温による循環不全
(禁忌)
非可逆的脳障害
高度大動脈弁閉鎖不全
大動脈解離
止血困難な進行性出血
悪性疾患の末期状態
a:正解。抗凝固療法では、一般的にヘパリンを用いて活性化凝固時間(ACT)を150~180秒程度で管理する。HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)の患者には、メシル酸ナファモスタットやアルガトロバンを使用する。
b:大腿動静脈から送脱血を行い、血液は遠心ポンプから人工肺でO2ガスが加えられ、大腿動脈→腹部大動脈→胸部大動脈へと逆流する。そのため、左心室にとって負荷(左室後負荷)が増大する。
c:ウェットラングが起こると、人工肺内部の血液の通り道と酸素の通り道を隔てる膜に先程の水滴が付着する。この水滴が壁となり、血液と酸素の接触を妨げ、血液側への酸素供給、血液側からの二酸化炭素排出が妨害される。その結果、血液中の酸素が低下したり、二酸化炭素が貯留する。ウェットラングが発生した時の対処法としてO2フラッシュを行う。プラズマリークとは、人工肺の膜が劣化し、血液中の血漿成分が漏れて人工肺の排気口から黄色の泡沫上の液体となって漏出することである。
d:重症例では、心機能の改善を図るためにV-A ECMOとIABPやIMPELLAを併用する場合が多い。V-A ECMOによる左室後負荷の増大に対して、IABPによる左室後負荷軽減の作用で補う。また、IMPELLAとは、左心室負荷を直接軽減する補助人工心臓の一つである。
e:正解。高度大動脈弁閉鎖不全を有する患者では、V-A ECMOによる逆向性送血により大動脈から左室内への逆流が起こることで、左室に負荷をかけてしまうことになるため禁忌である。